第72回 九州大学歯学部同窓会 福岡支部主催 学術講演会が開催されました

第72回 九州大学歯学部同窓会 福岡支部主催 学術講演会

「採算まで考慮した義歯治療~口腔機能から実地指導まで 」
歯科技工士・歯科衛生士と一緒に行う義歯治療

講師:鈴木 宏樹 先生
医療法人福和会 高齢者診療部部長
公立八女病院 歯科口腔外科 補綴部門担当

令和7年10月29日(水)、鈴木 宏樹 先生をお迎えし、午後7時30分より福岡県歯科医師会館視聴覚室にて上記演題でご講演をいただいた。
高齢化社会にある今日、わたくしたちの日常臨床において義歯治療は地域差こそあるものの、避けては通れない治療オプションの一つである。しかしながら、総義歯による咬合再建では、なかなか十分な咀嚼効率を期待できないこと、加えて現状の保険点数の算定では採算性に難があることで、患者の来院をどうしても敬遠してしまいがちなのが現状である。

そこで本講演では、病院歯科にて高齢者歯科と義歯治療のエキスパートである鈴木先生に、高齢者の義歯治療の実際と勘所について、豊富な症例に動画を交え解説いただき、また義歯患者への、採算性を考慮した保険算定方法についても教授いただいた。

講演ではまず、高齢者歯科の実際について解説いただいた。日本人の平均寿命と健康寿命を鑑みると男性は72歳から、女性は74歳から要介護へ突入していき、一方でR4年の調べでは75歳以上では4割の方が総義歯であったことから、総義歯の患者の多くが要介護状態であると述べられた。したがってよく噛める総義歯を作成し、自発的な食事により、きちんと栄養を摂取できる状態へと患者になってもらうことで、患者のQOLに大きく貢献できるとともに、入居できる施設基準の観点からご家族の方の負担も大きく軽減できるとされた。

次に本講演のメイントピックである義歯治療の保険算定について、また算定を踏まえた義歯患者とその治療に対する認識について詳細を解説いただいた。

従来の認識では、総義歯は装着時こそ算定点数は高いものの、その後の来院での算定は採算性に見合うものではなかった。しかしながら、口腔機能精密検査を行い口腔機能低下症として管理料を取りこぼしなく算定していくことで、月一回来院の際に662点が算定でき、チェアタイム・材料費などを考慮した場合、SPTには及ばないものの、一般の修復処置に比肩できる採算性が見込めるとし、『義歯は作って終わりではなく、よく噛める義歯を作りその後は月に一回義歯SPTとして来院していただいてこそ』と述べられた。

講演の後半は、義歯治療に携わる歯科技工士・歯科衛生士との関わりについてお話しいただいた。『よく噛めるのは歯科技工士さんが頑張ってくれたから』と患者に伝え、歯科技工士にもやりがいを持って仕事してもらうことの大切さについて、また患者の指導管理を行う中で、歯科衛生士が患者から信頼され感謝されることでモチベーションが刺激され成長を促すことについても述べられた。

本講演は、義歯治療の勘所や保険算定に加え、鈴木先生の高齢患者のQOLに対する真摯な姿勢を拝見する貴重な機会であった。明日からの義歯治療への取り組みを再考する知見を示してくれた鈴木宏樹先生に改めて感謝した夜であった。